SKETCHES

スケッチ

記憶、日々の風景、思ったことなど

  1. 部屋の片隅にたたずんでいる扇風機が、もう動かない観覧車のように見えた。

  2. 誰かの見た景色でこぼれた涙は一体誰の涙なんだろう。

  3. 季節を眺めていると、置いていかれるのか置いていくのかわからなくなる。

  4. 幼い子供のまなざしは、言葉の少ないだだっ広い世界を浮遊している。

  5. 誰かの部屋の本棚で、いつもは静かに眠り、ときどき寄り添って、また眠る。幸せな本の話。

  6. お父さんと男の子がキャッチボールをしている光景を座ってぼんやり眺めていたら、男の子の投げたボールが勢いよく転がってきたので、拾ってお父さんに投げ返した。外の世界から、こちらに向かってふいに入り込んできたみたいな感覚だった。

  7. なにもかもが嘘だったと思いたくもなければ、なにもかもが本当だったとも思いたくないような夜。

  8. 月の光にそそのかされて、猫が寂しげに鳴いていた。

  9. 通りすがりのアパートの二階が、ずいぶんと明るい電気を使っているんだなと思ったら、窓に月が映っているだけだった。

  10. 水を飲んで体をゆすぐように、小鳥の鳴き声は心をゆすいでくれる。

©︎ Nagase